スクランブル交差点には色とりどりの服をまとった人、ビルの上には輝くネオン――どこかで見たことのあるこの情景、実はすべてレゴブロックでできたもの。那須ハイランドパーク(栃木県那須郡、TEL 0287-78-1150)のレゴブロックテーマ館「レゴスタジアム」に出現した約20分の1の渋谷のジオラマだ。同館で3月中旬から展示を始めたこの「街」が今、来場者などの間で話題を呼んでいる。
手がけたのは、今年1月から渋谷パルコで開催されたチャリティーアート展「PIECE of PEACE TOKYO-『レゴ』でつくった世界遺産展 Part2-」での傑作、「サグラダファミリア」などの制作者としても記憶に新しい「レゴモデルビルダー」の直江和由さん。今回も、設計図を描かずにレゴを積み上げていく地道な作業で、本物そっくりな渋谷の街並みを完成させた。
2005年3月にオープンしたレゴスタジアムでは、「ミニランドエリア」と呼ばれる区画で、世界の著名な街並みを再現したレゴブロックのジオラマを、年に数回ずつ入れ替えながら展示してきた。今回新たに登場したのは、「渋谷」と「浅草」の2エリア。2つを同時に完成させた直江さんは「古くから変わらないものが多い浅草に対し、渋谷は常に新しい動きがある。2つの対比も面白いと思った」と話す。
街を歩く人を見比べればその違いは明らか。渋谷の「交差点」を見ると、歩いているのは制服を着た女子高生や、ワンピース姿、ボーダーのトップスなどスタイルも違うさまざまな人。身に着けたものには、全体にビビットなカラーが多いのも特徴だ。直江さんは何度も渋谷の街に訪れ、「交差点で人間観察をしたり写真を撮ったりしながら構想を練った」という。
細かいブロックが連なる浅草の街に対し、渋谷では「ポッチ」と呼ばれるブロックの突起が2×4ポッチの、比較的大きな「基本ブロック」を多く使用。ビルは最大のもので、駅直結の東急百貨店・東横店が1メートル40センチほどの大きさ。一見、街を忠実にジオラマ化したかに見えるこの街並みにも、直江さんならではのアイデアが随所に隠されている。
その1つが、階を上に重ねるにつれ「小さく」なる建物の設計。「模型の街は『見下げて』見るもの。普通に作ったら街のスケール感が出ない」(同)と、ブロックを上に向かって小さく積み上げることで目の錯覚を利用、実際に建物を「見上げた時」の感覚を表現した。奥に見えるランドマーク、「SHIBUYA109」シリンダーも、遠近法でスクランブル交差点から見たときと同じように見える大きさに。
シンプルな外観だけに単純な作りに見えながらも、実際に作るのに苦労を重ねたビルもある。細く斜めに格子状の線がはしる東急東横店の外観。「これが大変苦労した。表面に凹凸感を出さずにこの線を出すのは気の遠くなるような作業だった」(同)と振り返る。「だからいつもは巨大な広告が出ているこの壁面にはあえて広告もなくして、『壁面』そのものを見てもらいたかった(笑)」とも。
直江さんは、外から見えるビル内の座席や屋外の看板、広告塔に至るまでも、忠実に再現。「最後に来たときは撤去作業が進んでいるのを見た」(同)という、今年2月で撤去された日本サムスンの大型屋外広告塔「サムスン ウエーブ」は、レゴの街中では姿を残し、裏から当てられる照明でそのネオンも表現されている。透明ブロックを利用し光りを当てる「ネオン」は、109シリンダーのロゴ部分などにも使われている。
これまで世界で最も有名な「交差点」の1つ、NYタイムズスクエアのジオラマも手がけたという直江さんだが、「海外の景色に比べ、渋谷などの馴染みのある景色は日本人にもぱっと見て分かる。その分見たときの驚きも大きい」と反応の大きさを楽しんでいるようだ。巨大な「街」の中には、忘れてはいけない渋谷のシンボル「ハチ公」像もレゴブロックで再現されている。
入園料(那須ハイランドパーク)は、3歳~小学生=800円、中学生以上=1,500円、60歳以上=1,200円。
同時に登場した浅草エリア(関連画像)レゴで作った「ハチ公」も(関連画像)渋谷駅前ビルから109にかけての街並も忠実に再現(関連画像)レゴで作った「世界遺産」展-専門職人による大作「サグラダファミリア」も(シブヤ経済新聞)那須ハイランドパーク