岡本太郎記念現代芸術振興財団(港区南青山6)は3月18日、芸術家、故・岡本太郎が描いた巨大壁画「明日の神話」の恒久設置場所が渋谷区に決まったと発表した。渋谷区と並び壁画招致に名乗りを挙げていた広島市と大阪府吹田市はともに落選が決まり、3都市による「三つどもえ」となっていた誘致合戦に決着が付いた。
「明日の神話」は、岡本太郎が原爆さく裂の瞬間を描いた縦5.5メートル、幅30メートルに及ぶ壁画作品。1960年代末にメキシコの地で描かれた後に所在不明となり、2003年、メキシコシティー郊外の資材置き場で発見された壁画を日本へ移送し修復、現在は東京都現代美術館で公開されている。
同財団では、壁画発見後に発足した再生プロジェクトの一環で、岡本太郎生誕100年の2011年を目指し、再生した作品に相応しい恒久設置場所の選考作業を進めてきた。名乗りを挙げたのは、被爆地・広島市、太郎の代表作「太陽の塔」がある大阪府吹田市、太郎の生前のアトリエ兼自宅があった南青山からも近い渋谷区の3都市。
三つどもえとなった招致合戦は、「ハチ公から太郎へ。」をスローガンに地元団体やNPO、著名人らで組織した招致プロジェクトが活動を繰り広げた、渋谷区に軍配が上がった。同日午後、東京都現代美術館で開かれた会見で明日の神話再生プロジェクトゼネラル・プロデューサーの平野暁臣さん(岡本太郎記念館館長)は、「設置環境や設置の意義など総合的な見地から判断し、バランスよくすべての条件を満たしていた」と決定の理由を説明。
区が提案した壁画の設置場所は、JR渋谷駅西口と井の頭線改札を結ぶ「渋谷マークシティ」内の2階連絡通路部分。1日30万人もの通行量があり、「無数の人々が行き交う場所。目的客だけでなく多くの人を『刺激』できる」(平野さん)。ガラス越しでなく、日中は自然光で作品を見られるほか、ハチ公前交差点からも壁画の一部を見ることができる「高い情報発信性」(同)を評価。「パブリックアート」として描かれた同作の魅力を生かせる場所として、広島市、大阪府をリードしたかたちだ。
招致にあたり、渋谷、港区の各地元町会・商店会をはじめ、協賛企業にはドトールコーヒーやサイバーエージェント、サザビーリーグ、東急グループ各社など周辺の大企業も名を連ね、全面協力をアピールしたのも、設置の決め手となった。発表によると、渋谷ではすでに設置費用や技術などの条件をほぼクリアしているといい、受け入れ体制は整っている。
渋谷駅は、今年6月の東京メトロ「副都心線」開業を機に大規模な再開発が進む計画。渋谷側からの提案では、今後壁画を青山方面にも近い東口に移設する計画もあり、実現すれば太郎の生前の自宅兼アトリエがあった現「岡本太郎記念館」(港区南青山6)との動線もスムーズになる。駅周辺の動きに新たなニュースが加わったことで、今後注目も高まりそうだ。
壁画は、今後同財団と渋谷サイドとの協議を経て、「できるだけ早く設置する」(同)予定。
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