2003年、老朽化したホテルを全面改装し目黒通り沿いに出現したリノベーションホテル「CLASKA(クラスカ)」(目黒区中央町、TEL 03-3719-8121)が今年3月、コンセプトも新たに「再始動」する。
1階ロビーはDJブースを備え「遊び場」感を演出、家具ディレクションや空間デザインには気鋭クリエーターを起用し、イベント空間ではファション、デザイン関連などのパーティーを連日開催。約40年前に建てられた「ホテルニューメグロ」の「リノベーション(=再生)」物件として誕生したクラスカは、都内随一の「デザインホテル」としても知られ、国内だけでなく外国人客にも認知を広げてきた。
オープンから約4年半を迎える今春、内外装などのハード面ではなく、主にソフト面のバージョンアップを掲げ、新たなステージを目指す。プロジェクトに参加するのは、1992年から2006年まで「イデー」で商品企画部責任者などを務め、編集者、ライターとしても活躍する大熊健郎さんをはじめとしたプロジェクトチームをはじめ、今後「クラスカ発」のものづくりを担当する国内外のクリエーターたち。
リニューアルの背景にあるのは、「日本発の技術や価値を『発掘』し、国内だけでなく世界にも伝えていくこと」(プロジェクト広報の仙石恭子さん)。2階に開くクラスカ初の自主ギャラリー・ショップではリニューアルオープン以降、国内外のデザイナー、クリエーターらによるオリジナルプロダクトを順次発表し、それらの商品を海外にも発信していく計画。また、日本発ホテルとしてのブランド力を高めるため、客室にはクラスカが提案する「今の和室」3部屋が新たに加わる。
手がけるのは、イデー「スプートニク」主要デザイナー、プロダクトデザイナーとして活躍後2006年に独立し、家具・インテリアデザインを中心に活動する岡嶌要さん。和室をイメージした3部屋にはオリジナルのアメニティーグッズも用意し、グッズは販売も行う。これにより、クラスカには2004年のプロジェクトで登場した「インテンショナリーズ」「トラフ」による各部屋を合わせ、3タイプのコンセプトを持つ部屋(全15室)が誕生することになる。
このほか、1階ロビー空間は内装こそ大規模なてこ入れは行わないものの、玄米や日本独自の食材を取り入れたレストランへと業態を一新。表参道の自然食店「Kuh」(昨年閉店)を立ち上げた伊藤和江さんをレストランマネージャーに迎え、旬菜料理の「kio・kuh(キオク)」をニューオープンする。
2階ギャラリー・ショップのオープンで3階に移動するイベントスペースは、展示会や撮影など多目的に使えるよう「CLASKAスタジオ」として設備を強化。新設するキッチンスタジオではレストランマネージャー伊藤さんの料理教室も開講するという。スタジオでは、クラスカセレクトのレンタル家具サービスも始める。
今回のリニューアルにあたり、ホテルの総合プロデュースを手がけた「都市デザインシステム」(渋谷区千駄ヶ谷1)と運営を受託していたトランジットジェネラルオフィス(目黒区上目黒)は、両社とも経営から完全に離れる。
今回、広報・海外コンタクト担当としてプロジェクトに携わる仙石恭子さんは「まだ紹介されていない日本のものを海外に発信し、日本の文化を活性化させたい」と意気込みを語る。仙石さんはイデー勤務時代、デザインイベント「東京デザイナーズブロック」(2004年に終了)のコアスタッフとして国内外の参加デザイナーコンタクトなども担当した経験を持つ。
都内屈指の「インテリア・ストリート」として知られ、集積する独立系のインテリアショップも定着してきた目黒通りで、ハード面ではなく「内から」のリニューアルに着手するクラスカの「再始動」に注目が集まる。
ホテルは改修工事のため1月16日から一時営業を休止。リニューアルオープンは3月29日を予定。
「和室」をイメージした新たな客室(イメージ画像)目黒通りに出現したカルチャー新拠点 「クラスカ」の挑戦(シブヤ経済新聞)クラスカ