チェコ人アーティストのグッズ販売やギャラリー運営などを手がけるアットアームズ(大阪市)は11月17日より、渋谷ユーロスペース(渋谷区円山町)ほかで「ファンタスティック!チェコアニメ映画祭」を開催する。
人形アニメーション文化発祥の地として巨匠ヤン・シュヴァンクマイエルさんら多くの鬼才を輩出してきたチェコ。ときにシュールな一面や独創的なアイデアを交えながら展開する特有の世界観は「アートアニメーション」として世界的評価も高く、日本でも同国を題材にした個展や映画祭などの開催が後を絶たない。
同祭を主催するアットアームズも、チェコの魅力を紹介してきたギャラリーの一つ。昨年は吉祥寺バウスシアターでチェコのアーティストの「多才性」に焦点を当てセレクトした日本未公開作34本を上映し、好評を得た。「続編」となる今年は、劇場を渋谷ユーロスペースなど5会場に拡大。1989年以前の国営時代に作られたアニメーション作品のうち日本初公開の全32作品を上映する。
共産時代、社会統制下にありながら市民向けに夢を与える短編作品を作り続けた国営アニメスタジオ(現「クラートキー・フィルム・プラハ」)による作品は、制作からおよそ20年以上経った今も、良質な映像美術や繊細なストーリーで見る者を飽きさせない。映画祭では、これらの作品を各テーマに沿い「A=ガーリー」(6作品)、「B=アニマル」(9作品)、「C=ビタースイート」(8作品)、「D=ナンセンス」(9作品)の4プログラム編成で上映する。
絵本作家としても活躍するヨゼフ・パレチェクさんを美術に迎えた「けしのみ太郎 病気ってどうやってなおすの?」(リブシェ・パレチコヴァー監督、1982年、ガーリープログラム)は、パレチェクさんによるやわらかなパステルの色彩が印象的な切り絵アニメーション。2Dアニメーション「失敗作のニワトリ」(イジー・ブルデチカ監督、1963年、アニマルプログラム)は、落ちこぼれ少年が描いたニワトリが絵から飛び出す奇抜なストーリー。
ユーモアと皮肉が交錯する作品を集めたビタースイートプログラムでセレクトしたのは、人気マンガ家ウラジミール・イラーネクさんが共同監督と線画を手がけ、チェコで最も人気の高いスポーツの一つ、アイスホッケーのルールと反則を描く「アイスホッケー」(1978年)など。ナンセンスプログラムには、世界的画家アドルフ・ボルンさんの美術でダメ男の夢と現実を描き出す2Dアニメ「妄想癖」(H・マツォワレ、H・ドウブラヴァ監督、1984年)などの名作も登場する。
渋谷ユーロスペースでは、プログラムをA、B(11月17日~30日)、C、D(12月1日~14日)の前後期に分けて上映。公開を記念し、11月3日からはレイトショー特集「チェコアニメ~アート・キッチュ・ロマンティック~」も特別上映中。関連企画として、渋谷「ロゴスギャラリー」(渋谷パルコ・パート1地下1階、TEL 03-3496-1287)でも11月30日より、チェコ作家による絵本企画展を開催する。
劇場はほかに、吉祥寺バウスシアター、横浜シネマ ジャック&ベティ、金沢シネモンド、名古屋シネマテーク。