渋谷のクラブ「WOMB」(渋谷区円山町)で11月3日夜、ニューヨーク発のデジタルデザイントーナメント「Cut&Paste(カット&ペースト)」東京大会が開かれた。
同大会は2005年、米国を拠点に活動するクリエーティブ集団によって誕生。クラブを舞台に出場者同士がライブ形式でデジタルグラフィックデザインを競う独自のスタイルが話題を呼び、今年は大会の規模を米国各地や欧州、アジアなど世界11都市まで拡大した。
日本初上陸となった東京大会は、事前の公募を勝ち抜いた8人が出場。職業や性別、国籍を問わず、個性豊かな面々が出そろった。一方の作品の出来を会場で見極める審査員にも、広告制作会社バタフライ・ストローク(中央区)代表の青木克憲さんやタイポグラフィーユニット「大日本タイポ組合」など、各方面で活躍するクリエーターが顔をそろえた。
1ラウンドの持ち時間は15分。出場者は直前に発表される各ラウンドのテーマに沿い、完成品のアートワークやデジタル素材などを一切使わず、すべての作品を「ゼロ」から制作していく。使うのは、ペン入力式でモニター上に書き込めるワコム社製のタブレット。場内では設置したスクリーンに制作過程をすべて映し出すスタイルも特徴。渋谷会場でも、アップテンポな音楽が流れる中、各自が独創的なアイデアを競い合い、観客を盛り上げた。
第1ラウンドのテーマは「Currency(通弊・通用する物などの意)」。普段の制作活動でもほとんどをデジタル作業で行うという池野響子さんは15分間で女性と紙幣をモチーフに描いたダイナミックな作品を披露し、第1ラウンドを突破。第1ラウンドではほかに、ブラジル出身で日本人とのハーフのデザイナー、チアゴ・エンリケさん、ウェブデザイナーのヨクラU子さん、同じくウェブデザイナーで学生の肩書きも持つ外山奈巳加さんの3人が第2ラウンド(準決勝)に進出した。
続く第2ラウンドでは「Beast+portrait(獣+肖像画)」をテーマに、4人の出場者がそれぞれ、その場で撮った観客や手描きの「肖像」をモチーフにユニークな作品を制作。観客を沸かせ審査員の目に止まった池野響子さんの作品とチアゴ・エンリケさんの作品が選ばれた。
日本らしいテーマ「Wabi-sabi+Business card (わびさび+名刺)」(キャンバスは名刺を想定)の最終ラウンドで見事グランプリを勝ち取ったのは、終始ポップでカラフルな作品を披露し制作途中も音楽のリズムに合わせパフォーマンスを披露するなど観客を沸かせたチアゴ・エンリケさん。ファッションでのデザイン活動をはじめDJとしても活動する独特の「勘」を生かし、優勝につなげた。
会場となったWOMBでは、フロア内に一般客向けのタブレットも設置し、来場者自身もその場で作品制作を楽しんだ。カット&ペーストは今後11月中に香港、シドニーでも各大会が開かれ、全11都市での開催に幕を閉じる。