
Bリーグ・サンロッカーズ渋谷(以下、SR渋谷)が4月20日、青山学院記念館(渋谷区渋谷4)で川崎ブレイブサンダース(以下、川崎)に66‐64で競り勝った。
今月15日から指揮を執っているカイル・ベイリーヘッドコーチ(HC)体制となって初の勝利となったが、ベイリーHCは「昨日選手が出し切れなかった力を出してくれたことが一番うれしい」と喜んだ。
試合はオープンのシュートを決めきれず重い立ち上がりとなるが、アンソニー・クレモンズ選手の3ポイント(P)シュートや好守からの速攻などで得点を重ねる。クレモンズ選手は「練習後や試合前に想定しながらシューティングしている」とタフな状況のシュートも決めた。11‐19で迎えた第2クオーター(Q)立ち上がりには一時12点差を奪われるが、「離されてもおかしくない場面で付いていけるように、積極的にやらなきゃいけないタイミングだった」と田中大貴選手が3Pシュートを3本連続で沈めた。ミスマッチにならないように守る川崎に対し「ビッグマンにボールが入らないということは自分たちが空いているということで、積極的に打とうと思っていた」と言う。
34‐40で迎えた後半は、「インサイドはうちがアドバンテージを取れるかなと思っていたので、ダイブをするのはずっと大事だと言われていた」(田中選手)と、ケビン・ジョーンズ選手やジョシュ・ホーキンソン選手のゴール下を狙ったほか、ガード陣もアタックした。48‐49で迎えた最終Qは拮抗(きっこう)した展開が続く中、トロイ・マーフィージュニア選手の3Pシュートで逆転。1点を争う中、終盤には「ボールを持たれたら速いので、フィジカルにボールをもらわせる前に僕だけじゃなくみんな頑張っていた」と田中選手が外国籍選手にパスを出させない好守を見せた。攻撃ではクレモンズ選手が「アグレッシブに行こうと決めていた」とレイアップシュートと、「チームも頼ってくれているので準備している」と3Pシュートを沈め勝利を引き寄せた。
前日の敗戦から「何とかやり返さないといけない」とチームハイの16得点などで勝利に貢献した田中選手。今季HCを務めていたルカ・パヴィチェヴィッチさんとはアルバルク東京在籍時に5季を共に過ごし、昨季パヴィチェヴィッチさんのHC就任と共にSR渋谷に移籍したが、「(けがで)1年間バスケットから離れていた状況でも呼んでもらった身。この2年間を振り返ると必ずしも自分のベストな状態で彼の期待に応えられたか、助けになれたかと言われたらそうじゃないと思うのでそこの後悔はある」と自責しつつ、「自分と皆が置かれている状況は違うと思っていている。それは年数が違うし、休みの日を除いて7年間ほぼ毎日一緒に過ごしてきた。皆がどう思っているかは知らないが、個人的にはすごく難しい状況にあるし、心にぽっかり穴が開いた状態というのが正直な気持ち」と心境を吐露。
それでも、「自分たちもいきなりだったので悔やまれるが、私情ではあるのでファンの方々には関係ない。プロ選手としてお金をもらっている身として、どんな状況であれ、コートの上に立ったら一生懸命やらないといけない」と前を向く。
15得点に加えBリーグでのキャリアハイとなる6スチール(ボールを奪うプレー)を見せたクレモンズ選手は「正しい時に正しい位置にいること。そして固いディフェンスの中で取りに行けるところは狙っている」と守備を意識した。カザフスタンのチーム時代に1度HCの交代を経験しているクレモンズ選手は残り5試合に向けて、「ビジネス的には理解できるが気持ち的にはタフだし悲しい。でも、すぐに試合は来るので集中して戦わないといけない」と話した。
試合後、HC交代について取材に応じたゼネラルマネジャーの松岡良太さん。インターネット上でルカ・パヴィチェヴィッチ元HCの解任を求める署名が起きていたことは「噂では聞いていた」が影響はなかったことは「当たり前」と断言。ファンの反応もさまざまだが、「世界中のファンが納得する選択は絶対にないと思っているし、ファンがこう言っているからこうというのは違う」と言い、残り8試合での解任となったが、「その時点では(チャンピオンシップ出場の可能性が)あったが、他チームの勝敗による部分が大きかった。そこよりも、この組織と各々にとって残りの試合がすごく大事」と判断したという。選手たちには「僕らにしか見えない部分もあるし、同じ時間を共有してきているので総合的な判断をもう少しかみ砕いて伝えた」とも。