
SFアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の放送50周年を記念した企画展「宇宙戦艦ヤマト 全記録展」が3月15日、西武渋谷店(渋谷区宇田川町)A館 7階・2階の特設会場で始まる。先駆けて14日、同展を企画・プロデュースする庵野秀明さんや、森雪を演じた麻上洋子さんらによるテープカットなどが行われた。
1974(昭和49)年に放送が始まった同作は、滅亡寸前の地球を救うため戦艦ヤマトが宇宙を旅し、敵と戦いながら目的地へ向かう物語。深みのあるストーリーやドラマチックな演出も含め、日本のアニメ史に大きな影響を与えた。庵野さんは同作との出合いがなければ「今の自分はなかった」と語るほどのファンで、「当時『テレビ漫画』と呼ばれていたものを、『アニメーション』という別の言い方に変えてしまった作品。当時では考えられないくらい描き込まれた宇宙船がそのままの形を保ったまま動くかっこよさや、それまでの子ども向けのテレビ漫画と違うハードな人間ドラマも、見たことがないものを見せてもらった。設定の細かさも何もかもが新しく感じられ、そこにしびれた」と話す。
アニメや特撮に関する資料を収集・保存するNPO法人「アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC)」が保管する資料を中心に、1200点以上(2階=約200点、7階=約1000点)を展示。7階では、立ち上げ当時の「幻の企画書」をはじめ、設定資料や背景画、セル画などの中間資料を、5ゾーン全26エピソードに順に並べるほか、巨大ヤマト艦の模型展示、作中の効果音を聞ける展示も用意する。「可能な限り原版の展示にこだわった」と言うが、サイズが大きく展示数が減ってしまうことから、スキャンしてパネル化したものも並ぶ。
同NPO副理事長で明治大学大学院特任教授、アニメ・特撮研究家の氷川竜介さんが収集した、設定資料のコピーやスタジオ解散時に譲り受けたセル画、最終回のアテレコスタジオを見学した際に撮影したキャストの写真やもらったサインなども並ぶ。当時学生だった氷川さんは、同作がプロジェクト制でスタジオが解散してしまうことから、「フィルムそのものも芸術だが、手で緻密密に描いたものが未来永劫なくなる、散逸してしまうことに危機感を覚えた」と振り返る。
庵野さんは「今まで多分表に出ていない設定の原版、キャラクター設定、松本零士先生の直筆の絵も展示してあるので、その筆致をじかに見ていただきたい」と見どころを挙げる。中でも遺族から提供を受けた背景画は「僕も見たことがなかったもの」と言い、氷川さんは「色彩が本能に素晴らしい。ヤマトを支える、ある意味、美意識みたいなものが伝わってくると思う」と太鼓判を押す。
2階では、1974年の初代ヤマトから、現在上映されているリメークシリーズまでのヤマトの歴史を、年表パネルで時系列に紹介するほか、過去に発売した玩具などを展示。展示する設定画や原画、セル画、背景画などを収録する公式パンフレット(1,500円)、キャラクターのアクリルスタンド(1,500円)やTシャツ(2,750円~)、マスキングテープセット(1,320円)などの展覧会オリジナルグッズを販売する。
併せて、同館4階の「365cafe」では、コラボレーションカフェを展開。作中ではあまりおいしくないコーヒーを入れていた森雪にちなんだホットコーヒー「森雪の熱い思い」(990円)、滅びゆく赤い地球の光景に着想をえた「赤い地球パスタ(ナポリタン)」(ロールパン付き、1,300円)、「ガミラス帝国」の戦闘機をイメージした抹茶ケーキ「進撃!ガミラス艦」(880円)などをラインアップ。コラボレーションメニュー注文客には、ドリンクはコースター、フードはランチョンマットをそれぞれ1品につき1枚進呈する。会場と同じ7階にある「紀伊國屋書店」では、関連書籍や50周年企画本を販売する「ヤマトフェア」を開く。
氷川さんは「子ども向けではないアニメを始めた、原点の作品の源流が見られるので、足を運んでいただきたい」と呼びかけ、庵野さんは「どこも手は抜いていない、精一杯やった」と言い、「半世紀前の作品なので、若い人は古く感じるのは仕方がないかもしれないが、ガンダムが大丈夫ならヤマトも大丈夫。見に来てください。それに尽きる。見に来ていただければ良さは伝わるかな」と話した。
開催時間は10時~20時(最終入場は19時30分、3月19日は19時まで)。入場料は、大人=前売り2,500円、当日2,700円、子ども(小学生以上、高校生以下)=同1,300円、同1,500円。庵野さんが絵を手がけるアクリルスタンド付きのチケットは5,000円。今月31日まで。