
ファッションイベント「渋谷ファッションウィーク2025春」との共催企画として、アートプログラム「Bunkamuraの未来を照らす新しいアート体験2025」が3月13日、休館中の文化複合施設「Bunkamura」(渋谷区道玄坂2)で始まる。
Bunkamuraで展示されるSIDE COREの大型インスタレーション
昨年に続いて2回目となる同プログラムは、隣接する東急百貨店本店(2023年1月営業終了)跡の大規模再開発「Shibuya Upper West Project(渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト)」に伴い、現在長期休館中のBunkamuraを期間限定で会場として活用する特別企画。
今年は「街(ストリート)」をテーマに、参加アーティスト3組がそれぞれの視点から都市の変容をひもとく試み。Bunkamura 1階の正面エントランスでは、グラフィックアーティスト河野未彩さんが、RGBライトを使用したインスタレーション「【発光×干渉×鑑賞】者」を展示。広々とした空間を生かし、来場者を迎える演出として展開されている。作品は、入り口の通路を「発光の通路(左側)」「鑑賞者の通路(中央・白い床部分)」「干渉の通路(右側)」の3つに分け、来場者が中央の通路を通ることで鮮やかな光が生まれ、その影が右側のスクリーンに投影される仕組み。量子力学の「二重スリット実験」から着想を得た作品で、鑑賞者の視点や解釈によって見え方が変わる面白さがあるという。
地下1階の吹き抜けスペースでは、公共空間を舞台にストリートアートを展開するアーティストユニット「SIDE CORE」による大型インスタレーション「rode work shibuya」を展示。工事現場で使われる資材や照明をシャンデリアのように組み上げ、スケートボーダーが渋谷の街の隙間を滑る映像や都市のノイズ(音)を組み合わせた立体的な作品となっている。メンバーの松下徹さんは「使用している照明は、東日本大震災後の復興にも使われた、仙台のメーカーが製造したもの。福島からの電波時計の信号を受信し、統一された光を放つ仕組みになっている。この光の同期性を通じて、『異なる場所の光が、見えない電波によってつながる』というテーマを表現している」と語り、作品が持つ時間と空間のつながりについて説明。休業中のカフェ「ドゥ マゴ パリ」店内にも、粘土を使った建物の作品などを展示している。
屋外展示では、美術家・大山エンリコイサムさんが、東急百貨店本店の解体工事に伴い、むき出しとなったBunkamuraの外壁を生かした大型壁画「FFIGURATI #652」を制作し、工事が続く文化村通りの景観に新たな表情を加えている。大山さんが長年取り組んでいる、白と黒を基調とした「クイックタンストラクチャー」という表現手法を用い、約9メートル四方の作品2点を描いた。制作過程について、大山さんは「私の作品の中でも最大級のサイズ。高さ約30メートルの位置で、ゴンドラを使いながら、限られた2週間の制作期間の中で天候を考慮しながら制作した」と、特殊な環境を振り返る。さらに「渋谷の街なかにあるため、さまざまな角度から鑑賞できる。ビルの解体により、普段は見えない壁面が露出し、ユニークなキャンバスとなった」と手応えを語る。
地下1階の旧Bunkamuraのレコーディングスタジオでは、「資料でひもとくストリート」と題し、大山さんが所蔵するストリートアートに関する書籍や映像資料を展示。「ストリートアートに関する学術的な研究や、発展に貢献する場をつくりたい」という思いから、大山さんは今夏、渋谷・桜丘町でストリートアートやエアロゾル・ライティングなどの文献の収集・管理・公開を行う資料室「LGSA by EIOS (ラグサ バイ エイオス)」の開設を予定。今回の資料展示はその先行企画となるという。
会期中には、東京オリンピックの閉会式でソロダンスを披露したダンサー・アオイヤマダさんによるパフォーマンスや、アーティスト、専門家を招いたトークイベントも開催を予定する。
開催時間は13時~20時(最終日は18時まで)。入場無料。今月23日まで。