
渋谷区観光協会は2月17日、昨年9月と12月にそれぞれ京都市とハワイ・ホノルル市を視察した際の調査報告会を開いた。
渋谷を「国際文化観光都市」とするため、持続可能な観光(サステナブルツーリズム)の実現を目指す同協会は、2023年9月に「サステナブル渋谷プロジェクト」を立ち上げた。視察では、2024年度の東京都観光財団の助成事業「サステナブル・ツーリズム推進助成金」を活用し、京都とホノルルの先進的事例や実態を視察・調査した。
京都は、9月26日から27日にかけて訪問。初日は、京都の食文化を体現する観光地の一つで地元の買い物スポットとしても親しまれる、中京区にあるアーケード商店街「京都錦市場商店街」や、京都市役所、京都市観光協会を視察。地域の魅力掘り起こしや、オーバーツーリズム対策、スローツーリズム(スロージャーニー)の捉え方、インバウンドへの啓発メッセージの発信、観光資源・会場などの活用方法などについて調査した。
京都市では今年1月、宿泊税の引き上げを発表し、宿泊税も財源の一つとしていることから、宿泊税を導入していない渋谷区でも今後、オーバーツーリズム対策などに活用できる財源確保やマネタイズについて模索・協議を進めていきたい考えで、今後も各自治体や観光協会との連携やヒアリングを継続。海外の観光局やPR会社と連携し富裕層にアプローチしている点も、今後に生かしたいという。
2日目には、早朝から北区にある地元民が普段使いする「新大宮商店街」で行われている地域循環体験「循環スロージャーニー」に参加。米国出身で現在は京都に住むゲーリー・ブルームさんとブルーム順子さん夫婦が手がけるコーヒーかすの再生プロジェクトの一環で、コーヒー消費量日本一の京都の喫茶店などを自転車で巡り、コーヒーかすを回収していくツアーや、今宮神社散策、地元商店会との意見交換、シェアハウス「京都HATCH」の見学などのスケジュールをこなした。渋谷エリアでも、古紙回収などサステナブルな活動を組み込むツアー醸成や、広尾商店街でのみそ量り売りなどをヒントに、サステナブル・ツーリズムにつなげていきたい考え。
12月5日~11日の滞在となったホノルルでは、ワイキキやダウンタウン、歴史的建造物などのエリアを訪問。ダウンタウンとワイキキの間に位置するカカアコ地区は、工業地帯だった街並みが近年、アートや食、買い物などを楽しめるトレンディーなエリアに変わっており、ローカルと観光客との共存や、起業家やアーティストの支援活動などについて調査。地区内にある「パタゴニア」の店舗や複合施設「SALT」なども視察した。
ホノルルマラソンのエキスポ会場にも訪れ、3万6000人(2024年)が参加する大規模イベントの観光活用や、サステナブルな要素の取り入れ方、派生イベントなどについて調査、意見交換した。ハワイアンプロダクトを販売するデザイナーやマーケット、スイーツ店、ファーマーズマーケットも視察。パールハーバーやビショップ博物館の見学では、文化継承のための工夫や取り組み事例を調査。
ワイキキ中心部にある「アウトリガー・ワイキキ・ビーチコマー・ホテル」内で2024年に始まった「シルク・ドゥ・ソレイユ」ハワイ初のショー「アウアナ」の見学では、新たな観光施策の取り組みを調査し、観光促進や観光誘致に対するヒアリングも行った。終盤には、「地球の歩き方 ハワイカルチャー散歩」の著者でもある、ハワイ州観光局公式スペシャリストプログラムキュレーターの森出じゅんさんがガイドを務める街歩きツアーやイオラニ宮殿見学ツアーに参加。ホノルル州庁舎やホノルル日本人商工会議所にも出向き、ヒアリングや意見交換などをした後、最終日には「伊藤園」ハワイ支社と、ハワイ大学、ハワイ州観光局を訪れた。
先進事例都市への視察を通じ、2025年度、渋谷における都市型のサステナブル・ツーリズムの具体的な事業化を進める方針で、マイボトル推奨やゴミ問題の解決、地域ツアーの企画などを検討していく。地域コミュニティーとの対話を重要視し、住民や地元企業との連携を強化。文化や歴史、エリアごとの特徴に沿ったカルチャーの調査やインフラ整備、ボランティア・ガイドの育成などを課題に挙げる。オーバーツーリズムの課題や、大型イベント時などの情報発信や方針策定、マス観光からの脱却なども視野に入れ、「コンシャス・トラベル・シティー」の実現を目指す。