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渋谷駅近くでドローン使い防災訓練 上空から帰宅困難者役に呼びかけ

防災訓練の様子

防災訓練の様子

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 ドローンを活用した渋谷区と東急不動産の官民合同防災訓練が1月28日、「渋谷サクラステージ」(渋谷区桜丘町)の広場「にぎわい STAGE」で行われた。

「FLYING Bee」のメンバーら

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 発災時の駅周辺の帰宅困難者の発生や木造建築密集エリアの被害など、防災面で課題を抱えている渋谷区。地域防災計画を見直す中で、発災時には「的確な」避難誘導や避難情報が必要になることから、ドローンの導入を検討。2023年1月にはドローンスクールを運営するハミングバードと、災害時にドローンを活用して情報収集する支援協力に関する協定を締結。同年12月に東急不動産とドローンの活用を含めた地域防災に関する包括連携協定を結んだ。

 災害用ドローンの導入・活用に向けて、ドローンチーム「FLYING Bee(フライングビー)」を立ち上げた。現在は、渋谷区防災課の職員6人、同社総務部・同施設の運営も行っているビル運営事業部の社員4人の10人で構成。それぞれが個人で座学と実地試験を受けて操縦に必要なライセンスを取得した。パイロットは今後も増やしたい考えで、区は防災課や職員防災住宅に住む職員など防災に関わる職員を対象にする。同社は同施設を管理するグループ会社の東急コミュニティーの社員にもライセンス取得を促し、東急不動産ホールディングスとして新しいビジネスチャンスや、区と共に防災面での活用に生かしていく。

 フライングビーのメンバーは、区有施設での合同飛行練習に加え、防災訓練「渋谷防災キャラバン」に参画。合同で飛行の実演をし、区民に災害時のドローンの有用性について周知も図ってきた。この日は、駅に直結する大型複合施設であり、有事には帰宅困難者の受け入れを行う渋谷サクラステージで、「より実践的な」訓練として実施した。

 導入したドローンは業務用の災害用ドローン「DJI MATRICE 30T」(価格非公表)で、区は3台、同社は1台をそれぞれ保有。機体は縦約50センチ、横約60センチで、重量は約4キロ。最大飛行時間は約41分(参考)。広角カメラや最大200倍ズームに対応するズームカメラ、夜間や視界不明瞭な場所で使えるサーマルカメラなどを搭載。雨天時なども飛行できる防水・防塵性を備え、リアルタイムで音声を届けられるようスピーカーも付いている。

 発災時の帰宅困難者一時滞留場所である同広場で行われた訓練には、防災職員住宅に住む区の職員、同社の社員がそれぞれ帰宅困難者役として参加。安全面を考慮し、高さ9メートルの所にドローンを飛ばして上空で停滞。パイロットは2人1組で機体やカメラを左右に動かすなどして、被害状況の確認をした後に広場から少し離れた場所で待機する参加者を発見し、音声で広場まで誘導。その後、区の広域避難場所である代々木公園に向かうよう音声で案内した。

 フライングビーのメンバーで渋谷区危機管理対策部防災課災害対策推進係の本間翼さんは、操縦時は「スピードを出すのではなく、ゆっくり丁寧に扱うこと」を意識していると言い、「発災時は初動の情報収集が一番大事だと思う。被害状況をいかに早く把握して対策を立てるかという意味では、ドローンは早期の状況把握にかなり役に立つ」と話す。

 民間企業がドローンを飛ばすには申請等が必要であることから、発災時には、時期にもよるが区の職員で対応し、必要に応じて同社に協力を要請する形を取る。出動地域は渋谷区全域が対象で、渋谷駅周辺など大勢の帰宅困難者が滞留した場所や木造住宅密集地域などでの倒壊現場、延焼火災などを想定する。同社は、発災時は情報提供などを中心に協力する見込みだが、高層ビル上層部の被害状況の確認や、管理しているゴルフ場などのリゾート施設での確認作業にも活用していきたい考え。

  杉浦小枝渋谷区副区長は「災害に対する備えを強化し、地域の安全を守るための重要なステップになる」と期待を込めた。

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