青森県に由縁のある現代アーティストたちの作品を紹介する展覧会「Made in 青森 ―自然と歴史の交差点」が1月24日、表参道交差点のイベントスペース「OMOTESANDO CROSSING PARK」(港区南青山5)で始まった。
コンピューター周辺機器メーカー「バッファロー」(愛知県)と、同社商品関連の製造・販売を行うバッファローグループの持ち株会社メルコホールディングス(千代田区)の社長・牧寛之さんが主宰する「anonymous art project」による展覧会。2023年に立ち上がった同プロジェクトは、同所や青山通り沿いの「ZeroBase神宮前」などのイベントスペースの閑散期にアート展を開催するなど、日本の現代アートの振興に寄与する活動を行っている。
「Made in 青森」は、昨年9月にOMOTESANDO CROSSING PARKで開催した「Made in 滋賀」に次ぐ、その土地に由縁のあるアーティストに焦点を当てる展覧会となる。牧さんが社長を務めるメルコグループ(千代田区)が昨年、プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」に属する青森ワッツのオーナー企業となり青森に訪れた際に、土地や人に触れ、出身・由縁のあるアーティストの存在を知ったことなどから「青森県へのラブレターを作りたい」と企画。弘前れんが倉庫美術館館長の木村恵理子さんにキュレーションを依頼した。
青森は、現在「北東アジア最古級」といわれる土器が出土したことや縄文遺跡が多数残っていること、縄文土器の中に、琉球の文様など「太平洋のものとの類似点」が見つかるなど「先史時代から世界とつながっていた土地だと言われている」ことから、木村さんは「世界中とつながってきたという広がりを視野に入れて考えた方がいいのでは。人間の歴史の交差点という土地としての青森を軸の一つに企画した」と言う。
出展アーティストは、同県内出身者と同県内に滞在して作品を手がけたアーティスト10組。共通のテーマではなく「多様な人が多様な視点で」自然や人間の歴史などに目を向けて手がけた作品が並び、「一見ばらばらに見えるが、土地を通じて連なり合っていく」展示を目指した。
表参道交差点に面した屋外には、写真家の岩根愛さんの動画作品を上映。岩根さんが青森公立大学国際芸術センター青森に滞在した際に制作した作品で、米カリフォルニア州のマトール川が決壊する映像と、春にだけ見られる八甲田山の雪解け水が川になる映像となっている。「何かが交差していくイメージとしても(展覧会の)象徴的な作品になるのではと、世界とつながる海という展示をした」(木村さん)
弘前市出身の奈良美智(よしとも)さんは、現在練習中という濁らせた色で少女を描いた「Girl from the North Country」などを展示。そのほか同県出身アーティストは、明暗表現や光の向き、点在するさまざまな物などで「安心感と不安感が混在しているような」人物不在の室内空間を描くおいらせ町(旧百石町)出身・在住の画家・三村紗瑛子さん、彫刻家が作った作品のシリコン型から作ったおでんを食べてもらう「彫刻おでん屋台」シリーズの青森版を出品する平川市出身の小田切奨さんと静岡県生まれの中嶋哲夫さんのユニット「L PACK.」らが参加している。
「器がメインで装飾がサブという関係性を問いながら、笑いが起こるようなユーモアのある」作品を作る陶芸家の桝本佳子さんは、八戸美術館で個展を行う際に八戸市でリサーチした際の経験から、装飾がイカになっていたり波のようになっていたりする壺を展示。弘前市の「桜が好き」で同市に通っている写真家・映画監督の蜷川実花さんは、屋外に設置されたトレーラーハウス内に同市の桜の写真と、本物の桜を含む生花と造花で作った作品を出品。時間経過によって変化する作品で生命の循環やリアルとフェイクの狭間などを表現。トレーラーハウス内には蜷川さんが会期中毎日同作品を撮影した写真を貼り出し、作品の経過を見られるようにしている。
開催時間は10時~20時。入場無料。2月24日まで。