渋谷駅周辺の再開発に伴い駅前から国道246号線沿いに移設された石像「モヤイ像」の花壇が1月22日、移設セレモニーに合わせてお披露目された。
1980(昭和55)年の設置から45年間、渋谷駅西口待ち合わせスポットの一つとして親しまれてきたモヤイ像。像を囲んでいた円形の植え込みでは、「渋谷Flowerプロジェクト(通称=シブハナ)」のメンバーがボランティアで植栽やメンテナンスなどの活動を続けてきた。2003(平成15)年、環境イベント「アースデー東京」に合わせて、像の周り一面をポットの花で飾ったのが活動の始まり。翌2004(平成16)年には植え込みが実現し、シブハナは渋谷区公認の下、同所を含め駅周辺の花壇を継続的に管理してきた。
モヤイ像の周りに植えられていた植物は、像が昨年11月に移動した際に、元の場所から一時的に掘り出して、12月21日に最初の植え替え作業を行った。その際、「寒さなどによる影響か、植物の一部が枯れてしまった」(同プロジェクト代表の小島盛利さん)と言い、年が明けてから新しい植物も増やして再度植え替えを行い、花壇を完成させた。
モヤイ像の「新天地」は、駅西口の複合施設「渋谷フクラス」(渋谷区道玄坂1)西側の広場の一角。もともと円形だった花壇は四角になり、移設前よりも「少し小さくなって植物も8割ほどになった」と変化はあったものの、「移動して持ってきた花は全て収まった」とも。1月11日と18日の2週にわたり作業し、「モヤイ像の新しいスポットがなるべく『明るく』なるように、黄色や白などの色を取り入れた」と話す。花壇を飾るのは、繊細でふわふわとした黄色いヒメキンギョソウや紫色のアネモネなど。
モヤイ像「発祥の地」の新島にも生えている小型のヤシの木「フェニックスロベレニー」は、植え替える際に葉が枯れてしまったが、「ひょっとしたら、また芽が出てくるかもしれない」と植え直した。「本当に枯れてしまったかどうかはは、まだ分からない。悩んだが、植え替えて元気になるのを待つことにした」と、希望は捨てていない。
花壇の一角には、「モヤイ像」と記された「看板」を初めて設置。「看板は今までなかった。外国人向けに英語表記も載せて、名前の下に小さく『シブハナ』のQRコードもある」と言う。移設セレモニーを待つ約2カ月の間、シートをかぶせられた状態だったモヤイ像。引っ越してきたモヤイ像を改めて見て、「正面方向ではなく、新島の方角に向いてあえて横顔を見せている感じで、かっこいい」と、植物に囲まれ「りりしさが増した」像を見つめる。
今年45歳になる小島さんは、22年間にまわたりシブハナの活動を続けてきた。「人生のほぼ半分、モヤイと一緒にいることになる。月日はあまり意識してこなかったが、時間の経過を改めて感じる。今回の移設が一番大きい出来事だったと思う」と振り返る。花壇のメンテナンスだけでなく、デッキブラシで像の表面に蓄積した汚れを落とす作業などもしてきた。「この年末年始はぐるぐる巻きの状態だったので、例年年末にすることも多い汚れ落としができなかった。折を見てきれいにしてあげられたら」と話す。
「移設前、像の上にデッキができてから全く日が当たらなくなってしまっていた。新しい場所は日当たりが良くなったので、花にとってもすごく良いこと」と笑顔を見せる。
今後も定期的にメンテナンスを続け、これまで通り年に3~4回、植物を植え替えていくという。