渋谷のプラネタリウム施設「コスモプラネタリウム渋谷」(渋谷区桜丘町)の解説員8人それぞれによる、星座や天文現象の解説を一冊にまとめた書籍「プラネタリウム解説員が本気で伝えたい 星座と星めぐり」(中央公論新社)が12月23日に発売された。
コスモプラネタリウム渋谷は、2010(平成22)年11月に旧大和田小学校跡地にオープンした渋谷区の施設「渋谷区文化総合センター大和田」最上階の12階に開設。渋谷エリアにはかつて、駅東口の旧東急文化会館に「五島プラネタリウム」があったが、2001(平成13)年に同館解体とともに閉館。約10年近くの「ブランク」を経てプラネタリウムが復活を遂げ、14年にわたり営業を続けている。運営は東急コミュニティー(世田谷区)が手がける。
同書を出版する中央公論新社(千代田区)の編集者が同館をよく訪れていたことがきっかけで、書籍化の話が持ち上がった。在籍する解説員8人が日替わりで当日の星座などについて解説するプログラム「今夜の星めぐり」の面白さが目にとまり、各解説員の「星空解説」をまとめた一冊が、今回出来上がった。チーフ解説員の永田美絵さんは「解説員よって全然違う。通常のプラネタリウムだと、星座の解説はあっても後半は決まった配給作品を流すのが国内ではほとんどだが、当館は始めから終わりまで40分間、全て生解説」と、同プログラムの特徴を説明する。
解説員それぞれの個性と知識を生かしながらも、「春の章」~「冬の章」と四季ごとに4章、各章を2人で担当し、8人の文章がリレー形式でつながっていく構成。コラムは1人約1万字と長文に及び、各自が2~3カ月かけて執筆作業に臨んだという。「日々少しずつ書いていくスタッフもいれば、形から入ってホテルを取って書くスタッフもいた。どの解説員も今回の機会を頂いて、すごく喜んで楽しくワクワクしながら取り組んでいた」(永田さん)と話す。
吉本芸人の傍ら同館で解説員を務める田畑祐一さんは、秋の章を執筆。普段、台本などもない中で解説してきた自身の言葉を、改めて文章として起こした際に、「天体や星に対する知識がまだまだ浅いと感じ、自分の小ささを知った」と話す。これまでにも星について執筆をしてきた経験があるという、「春の章」担当の佐々木勇太さんも、執筆に当たり初めて自分の投影会の様子を録音し、文字に起こしてみたと言い、「考えながら話していたつもりが、無駄なことを言っているなとも感じた。解説とは違った、文章としてのバランスの取り方が難しかった」と続ける。
「夏の章」で「七夕に星を詠む」をタイトルにつづった西香織さんは「みんなと一緒に書けたことが何よりもうれしかった。一生の宝物になった」と喜ぶ。同じく夏を担当した小久保史織さんも喜びを語る一方で、「話し言葉で自分の解説をありのままに書いたら、編集者の方から戻ってきた文章がすごく整えられていて驚いた」と言い、「何度もやり取りをして、自分の言葉を入れられたことがありがたかった」と笑顔を見せる。
五島プラネタリウムでも27年間解説員を務めた、この道50年の「伝説のプラネタリアン」村松修さんも、解説員8人が書き上げた文章全てに目を通し、書籍の監修を務めた。各章の合間には、チーフ解説員・永田さんが解説員の「失敗談」などをつづったコラムも収める。永田さんは「本には各解説員の自己紹介や、この道に入ったきっかけなども書かれていて、同じ星空でも人によってこんなに『語り』が違うんだなと感じていただけると思う。本を読んで、好きな解説員の投影を見に来ていただければ」と呼びかける。
価格は1,760円。全国の書店やアマゾンなどで扱う。