東京メトロ銀座線表参道~青山一丁目間の駅デザイン案が2月27日、公開で行われた最終審査を経て決まった。
銀座線が今年開業90周年を迎えるに当たり、全駅のリニューアルを進めている東京メトロ。全19駅を5つのエリアに分け、各エリアで異なるコンセプトを設けて駅デザインを公募するコンペティションを行ってきた。表参道・外苑前・青山一丁目3駅のコンセプトは「トレンド」。最優秀賞に選ばれたデザイン案をベースに、同社が最終的なデザインを作り上げる。
応募総数74点(うち19点は海外から)の中から最優秀賞(賞金50万円)に選ばれたのは、外苑前駅近くにオフィスを構える設計・デザイン事務所ノンスケール(港区北青山2)のデザイナー具志つや子さん。約1カ月かけてまとめたデザイン案は、具志さんが上京前に抱いていた同エリアへの「憧れ」と、同エリアを歩いて見付けた発見などを織り交ぜたという。
コンセプトは、フランス語の「調和=Accord」と「駅=Gare」を組み合わせた造語「ACO-GARE(あこがれ)」。床や天井などは、「明るく・シンプル」に白・やライトグレーを基調とした。ホームは、「緑への憧れ」を共通テーマに、表参道駅=ケヤキ、外苑前駅=イチョウ、青山一丁目駅=桜をモチーフにしたデザインを取り入れることで「ゆるやかな調和」を持たせたという。改札口は、表参道駅=ファッション、外苑前駅=スポーツ、青山一丁目駅=住まいと、各駅周辺の「憧れ要素」をデザインに反映。木材や石材などで伝統、光のラインで未来と、使う素材を通して時間軸を表現した。
具志さんは「正直あまり自信はなく、緊張したし不安だった」と言うが、最優秀賞に決まった時は「驚いたが、すごくうれしかった」と振り返る。「(同エリアには)多くの人が憧れを持っていると思うし、魅力を持っている街。利用する方々の、街への期待感、街に出る楽しみにつながるような駅になれば」と期待を込める。
優秀賞(賞金30万円)に選ばれたのは2人。岩間直哉さん(博報堂プロダクツ)は、「情報のインプット」「自分の中での思考」「対話によるアウトプット」を通して「ひらめきが生まれる駅」として、情報を検索できるタッチパネルの設置やワーキングスペースの併設などを提案した。
イギリスで働くスペイン人女性のルイーザ ヴィンセンテ・マルティネスさん(Tony Meadows Associates Ltd.)は、天井に鏡を採用することで空間を広く見せる空間づくりや、イチョウの落ち葉や陸上のトラックを取り入れるデザインを提案。「日本や東京に興味があった」ことから応募したマルティネスさんは今回が初来日で、ウェブ上の地図などを参考にデザイン案を練っていったという。他の応募者の案を見て「似たような案もあり方向性は間違っていなかったと思う」と話す。
そのほか、最終選考に残った5人が入選、3人が特別賞を受賞した。
トレンドエリア3駅のリニューアル工事着手は2018年度を予定。渋谷駅も同エリアに含まれているが、他社線を含む駅全体が大規模な工事を行っている同駅は、建築家・内藤廣さんが設計を手掛けていることから、今回のコンペティションは対象外となっていた。