渋谷・円山町のミニシアター「ユーロスペース」(渋谷区円山町)で7月23日から、国内初の長編アニメーション映画「桃太郎 海の神兵」が1週間限定で上映される。
1945(昭和20)年に公開された同作は、第二次世界大戦末期に海軍省の依頼で松竹が製作した戦時下の国策映画。メガホンを取った瀬尾光世監督は製作に当たり海軍落下傘部隊に体験入隊。作品には、そこで視察した基地の様子・降下機内・戦闘方式などが反映されているが、戦闘シーンの描写は少ない。
松竹は昨年、創立120周年と終戦70周年を機に同作のデジタル修復に着手。映像監修に山田洋二監督作品のカメラマン近森眞史さん、映像監修協力にスタジオジブリ作品の撮影監督・奥井敦さんを迎えるなどして、今年4月に修復を完了。デジタル修復版は第69回カンヌ国際映画祭クラシック部門でワールドプレミア上映。今回、国内で初めて上映する。
5万枚のセル画で作られた同作は、桃太郎が隊長を務めるサル、イヌ、キジ、クマの落下傘部隊が鬼ヶ島へ向かい島を制圧する物語。公開当時、同作を鑑賞した手塚治虫は「一生に一度、必ずこのようなアニメをつくりたいと決心し、漫画家になり、そしてアニメをつくり始めた」とコメントしたという。
瀬尾監督は1911(明治44)年兵庫県生まれ。映画の製作・上映団体「日本プロレタリア映画同盟」(プロキノ)を経て、「日本のアニメーションの父」と評されるアニメ製作者・政岡憲三に師事。1933(昭和8)年に短編アニメ「お猿の三吉」シリーズを製作。1943(昭和18)年の中編アニメ「桃太郎の海鷲」ヒットを受け、長編アニメ「桃太郎海の神兵」を製作した。戦後は絵本作家として活動し、2010年に亡くなった。
期間中は連日トークショーを行う。鑑賞料は、一般=1,400円、大学・専門学校生1,200円ほか。今月29日まで。