ヒューマントラストシネマ渋谷(渋谷区渋谷1)で5月14日から、北欧ブランド「マリメッコ」の創業者アルミ・ラティアの人生を描いた「ファブリックの女王」が公開される。
フィンランド語で「Mariのための服」を意味する「マリメッコ」は、フィンランドを代表するブランドとして日本でも広く知られている。ケシの花をモチーフにした「ウニッコ」など独特なプリントと色彩が特長で、テキスタイルをはじめとするホームインテリアや洋服、バッグ、アクセサリーなど幅広い商品を展開している。
1912年生まれのラティアは、ヘルシンキのデザイン学校卒業後、故郷で織物工房を開くが戦争で閉鎖。広告代理店でコピーライターとして働いた後、夫ヴィリヨが買収したマリメッコの前身となるプリンテックス社で働き始め、1951年にデザイン会社としてマリメッコを設立した。1972年に亡くなった。
物語の舞台は戦後間もないフィンランド。業務用のオイルプリントを作るプリンテックス社で働いていたラティアは、個人向けに綿のファブリックにプリントすることを思いつき「マリメッコ」を設立。ただファブリックを売るだけでなく、その使い方を示すために開いたドレスのファッションショーが成功を収め、注目を集めるようになる。事業は軌道に乗り始めるも、ブランドのためには出費を惜しまなかったことから幾度も倒産の危機に陥り、マリメッコにのめり込みすぎてしまい家族と不和が生じてしまう。困難に立ち向かいながら新しいライフスタイルの提案に情熱を注いだ人生を描く。
メガホンをとったのはヨールン・ドンネル監督。1933年フィンランド生まれ、1960年代から10本以上の映画を製作しているほか、作家・政治家としても活動している。プロデューサーを務めたイングマール・ベルイマン監督作「ファニーとアレクサンデル」(1982年)はアカデミー賞外国語映画賞を受賞している。1967年にラティアと出会い、1974年までマリメッコの役員を務めていた。
「アルミ・ラティアについての映画を作ることは、長い間ずっと私の課題だった。特に脚本が難しく、形にすることに時間がかかった」と振り返るドンネル監督。「無駄のないミニマルなこの映画の描き方は、予算の問題だけでなく、アルミの実像に迫るのにうまく作用したと思っている」とコメントしている。