ラフォーレ原宿(渋谷区神宮前1)6階・ラフォーレミュージアムで2月19日、魔女をテーマにした大規模な展覧会「魔女の秘密展」が始まった。主催は、TBS・東京新聞・東映。
大阪や名古屋など5会場を巡回し、延べ約14万人以上を動員した展覧会の東京開催となる同展。2009年に独プファルツ歴史博物館が企画・開催した「魔女-伝説と真実」を基に新たに構成し、ドイツやオーストリア、フランスなど30カ所以上の美術館・博物館から集めた約100点を通じ、魔女の姿を多角的に紹介する。
中世(5~15世紀)から存在した「Witch(魔女)」という言葉。「悪魔と契約を結ぶ」「空を飛ぶ」「黒魔術で悪事を働く」など5つの条件にあてはまる人を魔女と定義し、かつては悪い存在として信じられていた。予言やセラピー、雨乞いなどの呪術的な行為など、魔術や神秘的な力が日常生活と結び付いていたという中世~近世でキリスト教が普及すると、悪いことが起こると「魔女のせいだ」と考えられるようになった。
第1章の「信じる」では、魔よけの効果があるとされた絵や文言を書いた巻物、本物のモグラの前足で作られたお守り、護符として五芒(ごぼう)星を描いているゆりかごなど、自分の身に悪事が及ばないように人々がすがったものなどを展示している。印刷技術の進歩で情報が広く流布され魔女のイメージが固定化していった近世(16~18世紀ごろ)に、魔女が「人々の不満や憎悪の標的になっていった」理由を考察する第2章「妄信する」では、神学者や法律家などが書いた魔女に関する本、空を飛んだり呪いをかけたりする魔女のイメージを描いた芸術作品も登場する。
現代の研究では、15世紀半ばからの300年間で女性を中心に男性や子どもを含め約6万人強の人たちが魔女として処刑されたと報告されている。第3章「裁く」では、魔女である証拠=自白をさせるために使われた、指をつぶす「親指締め」、拷問椅子などの拷問器具の数々、拷問時に着せていたシャツなどが並ぶ。「異端尋問」や「火あぶり刑」のシーンを表現したメディアインスタレーションも用意。1775年に開かれたという最後の魔女裁判以降、魔女迫害が終幕を見せ魔女のイメージも変化していった。最終章「想う」では、絵画や彫刻など、美術芸術やイメージの世界で残されている魔女の姿を紹介する。
15世紀半ば~18世紀半ばごろまでのものを中心に展示する同展。同展を監修したドイツ文学者の西山佑子さんは「魔女迫害は中世の時代だけであったことではない。中世から近世に替わる時に起きたということを強調したい」と意気込み、「無かったけれど定着している日本でも受け継いでいかないといけない。ヨーロッパにこういう歴史があったというのを見ていただきたい」と来場を呼び掛ける。
ドイツに足を運び取材をしてきたという編集者で評論家の山田五郎さんも、「魔女裁判が盛んに行われたのは17世紀。ある程度民主的な状況がそろい情報がある中で、裁判所で法にのっとって行われていた」といい、「標的にされたくないから誰かを犠牲にする、現代のいじめの構図と一緒。うわさが流布されバッシングになるインターネットも似た構図なのでは。今の日本にも共通する、人の心の怖さや群集心理の残酷さを感じていただければ」と話す。
同展のオフィシャルアンバサダーを務める声優で歌手の上坂すみれさんは「自分の抱いている魔女のファンタジー的な要素とは大きく異なり、社会の暗部であるところの魔女というのがよく分かる。(拷問器具は)自分の中のイメージより、魔女裁判というものが雄弁に語られている感じがした」とも。
開催時間は11時~19時(最終日は17時まで、入場は閉場の30分前まで)。入場料は、前売り=一般・大学生1,000円、高校・中学生800円、当日=同1,200円、同1,000円、小学生200円ほか。3月31日まで。