渋谷・スペイン坂上のミニシアター「シネマライズ」(渋谷区宇田川町)が2016年1月、閉館する。
1986(昭和61)年6月に開館した同館。同館が入居するライズビルは、建築家・北川原温さんが「機械」をイメージしてデザインした外観などが特長的。シネマライズの専有面積は605.98平方メートル。1996年には2スクリーンへ改装し、2004年にはバーが営業していた地階にデジタル上映劇場「ライズX」をオープン。2010年からは開館当初の1スクリーン(303席)で営業している。
開館以来数多くのミニシアター系ヒット作を上映してきたが、閉館の大きな要因は、ペンギン通りを挟んだ対面に位置する渋谷パルコの建て替えに伴い周辺環境が「激変する」こと。加えて、シネマコンプレックスの台頭による映画館を取り巻く環境や興行業界の構造の変化、テクノロジーの進化に伴いフィルムからデジタル化されたことで、映画に求められるものが変わったことなどを挙げる。
同館では「ライズX」でデジタルに対応するなど「途中までは一緒に走ってきた」(同館を経営する泰和企業専務の頼香苗さん)と振り返るが、「シネマライズらしさ」を考える中で「役目は終わったのでは」と判断したという。10月9日に配給会社など業界関係者にメールで知らせたところ、多くの反響があったといい、頼さんは「熱いメールも頂き、皆さんの記憶の中に残すことができて良かった」と話す。
渋谷周辺はかつてミニシアターの集積エリアとして知られ、最盛期は20館近くあったが、これまでにヒューマントラストシネマ文化村通り、シネセゾン渋谷、シネフロント、シネマ・アンジェリカ、渋谷シネ・ラ・セット、渋谷シアターTSUTAYAなどが相次いで姿を消している。頼さんはミニシアターの減少に懸念を抱きつつも、「引っ張っていく自信もない」と声を落とす。
ライズビルは取り壊さないため、「ライズX」跡に位置するライブハウス「WWW」は引き続き営業を継続。「シネマライズ」跡の活用については今後発表するという。
同館のオープニング作品は、第2次世界大戦~戦後を背景に英国人女性の人生を描いた「プレンティ」。歴代上映作品で一番の人気作品は、36週にわたるロングラン公演となった「アメリ」(興行収入=2億8,150万1,100円、観客動員数=18万1491人)だった。これに、アーヴィン・ウォルシュのカルト小説が原作の青春映画「トレインスポッティング」(同2億3,896万8,200円、同14万8833人)、マサラムービー「ムトゥ踊るマハラジャ」(同2億814万4,900円、同12万7445人)、キューバ音楽の実録映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(同1億8,905万9,000円、同11万7333人)、男性2人の同性愛を描いた香港映画「ブエノスアイレス」(1億5,777万400円、9万8869人)が続く。
最終上映作品は、11月27日公開の「黄金のアデーレ 名画の帰還」。頼さんは「まだ上映はあるので、見に来ていただければ」と来館を呼び掛ける。同作上映終了後に閉館の予定。