西武渋谷店(渋谷区宇田川町)が8月21日、リニューアルオープンした。
1968(昭和48)年に開業した同店。1986(昭和61)年には公園通り沿いにSEED館を、翌年にはロフト館をオープン。1999年にSEED館を現在のモヴィーダ館に改装し、渋谷エリアは5館体制で運営している。
2007年以来8年ぶりの大規模な改装となる今回。同店を展開するそごう・西武(千代田区)は2020年以降に同店を「新しい商業施設」に建て替える計画で、その再開発に向けたステップとして「アート&デザイン」をテーマにストアメッセージ「Art meets Life」の先鋭化を図る。全体的に空間は「くつろぎ」を意識し、商品は「上質で高感度な」ブランドに注力した。
A館1階の入り口はドイツの現代アーティスト、カールステン・ニコライさんが映像と音で演出。白を基調にした同所の柱4本(高さ2.8~3.3メートル)には、全面にLEDビジョンを設置。カメラ3台で捉えるエントランス周辺を往来する人たちの動きや、オンラインで取得する気象情報、日付などを色に変換した横じまのアート作品を上映する。色は、暖かい季節には暖色、寒い季節には暖色を採用し、約20色のグラデーションを複数組み合わせている。加えて、上映している色(8トーン)に基づいて音が流れるようにした。
渋谷駅前のスクランブル交差点にもほど近いことから、「雑踏とぶつからないように、音量を抑えるなどクリーンで穏やかに仕上げた」と話すニコライさん。「にぎやかな(渋谷の)中でミニマリズムなものを楽しんでいただければ」とも。稼働時間は9時30分~23時。
A館3階では、デザイナー佐藤オオキさん(nendo)とコラボ。佐藤さんは、連絡通路でつながるB館3階の自主編集売り場「コンポラックス」を、ヨーロッパの公園をコンセプトにデザインしたことから、その公園に「隣接した遊園地」をコンセプトに掲げた。明るめの緑みの青色を多用し、売り場には切り取ったスチールでサーカステントやメリーゴーラウンドなどのような空間を作り、什器は車輪やシルクハットなどを装飾。玉乗りのボールのようなスツールを置くなどしている。「テンションが高くなるようなフロア」(佐藤さん)を目指した。
同フロアは、30代の女性をコアターゲットにスタイリングの「鍵」になる商品をセレクトする自主編集売り場「キートゥースタイル」で、コンテンポラリーファッションや次世代デザイナーズなど52ブランドを集積。森永邦彦さんが手掛ける「アンリアレイジ」、109系ブランド「マウジー」を立ち上げたことで知られる森本容子さんの新デニムブランド「バンカー」、NY発「パブリックスクール」、「フッドバイエアー」などを新規導入した。
40代以上をコアターゲットに据える5階には建築家・永山祐子さんを起用。婦人服を展開するA館は「宮殿」をコンセプトに、リングメッシュで区切った売り場やシャンデリアをイメージした照明などを装飾。日本のドレスブランド「マローブ」、「ミカコ ナカムラ」、伊ニットブランド「ロレーナ アントニアッツィ」などを新規導入し、高価格商品をこれまでの10万円台から20万円台に引き上げた。
紳士服を展開するB館は「博物館」をコンセプトに、木目を基調に落ち着いたトーンの照明とマテリアルで「クラシカルな印象」に統一。商品は、「カジュアルスタイル」「ホビースタイル」「ビジネスパーツ」など5つの編集テーマでセレクトし、パリ発「カバリエ・ブルー」、バイクや車などモーターファッションを提案する「モトーリモーダ」などを新規導入。男性の書斎をイメージした雑貨売り場「キュリオシュタット」では、筆記具や腕時計、剥製、標本など幅広い商品をそろえる。
駅周辺を中心とした渋谷は再開発が進んでおり、現在「20のプロジェクトが進行し、30数本のビルが建つ予定」(篁(たかむら)富夫店長)。その中で、「感度の高い大人に驚きを提供するため、現状路線を強化しつつ個性も大事。斬新であることは間違いない」と自信を見せる。
営業時間は10時~21時(日曜・祝日は20時まで)。今回の改装に関わる投資額は約20億円。