ルイ・ヴィトン表参道店(渋谷区神宮前5)7階のアートスペース「エスパス ルイ・ヴィトン東京」(TEL 03-5766-1094)で現在、ベルギー人アーティストのヤン・ファーブルさんの個展「Tribute to Hieronymus Bosch in Congo(2011-2013)」(ヒエロニムス・ボスとコンゴ-ボスをたたえて)が開催されている。
ヤン・ファーブルさんは1958年ベルギー・アントワープ生まれ。ベルギー王宮内「鏡の間」の天井を手掛けるなどしているほか、劇作家・演出家としても活動。ルーブル美術館をはじめさまざまな美術館で個展を開催し、日本国内では金澤21世紀美術館や東京都現代美術館での展覧会にも参加している。「昆虫記」で知られる生物学者ジャン・アンリ・ファーブルのひ孫でもある。
同展は、ファーブルさんのアーティスト活動のテーマ「Metamorphosis(変容・変態)」を最も表しているという、甲虫のスカラベ(ブラジルタマムシ)の前しが硬くなった鞘羽を使った作品で、ベルギーが19世紀から20世紀にかけて行ったコンゴに対する奴隷制度や略奪行為など、植民地政策の歴史を題材にしている。
展示するのはモザイク作品5点、三連画1点、骸骨などをかたどった彫刻作品8点の計14点。作品は、「欲望と退廃の象徴」として多用されているイチゴを取り入れた「文明をもたらす国、ベルギー」、人間を食べる鳥をかたどった「鍋がやかんを黒いという」(いずれも2012年)など、初期フランドル派の画家ヒエロニムス・ボスの三連画「地上の悦楽の園」に描かれている内容にインスピレーションを受けている。スカラベの羽1枚には約1500面があり、光の反射で緑や青、オレンジなど色が変化して見えるのが特徴的。羽1枚1枚を接着剤で付けて制作する作品は、パネル1枚作るのにファーブルさんとアシスタント1人の計2人で約2カ月かかるという。
ファーブルさんは、「生と死の象徴と捉えられていた」ことや、「曽祖父の研究の影響で実筆の書物を幼少期から見ていた」ことから、スカラベを素材として採用。植民地政策の歴史を題材にしているのは「隠されてきた事実であるから」と言い、「(ベルギー国内で)公に議論されるようになったのはここ10年くらい」と話す。
開館時間は12時~20時。入場無料。9月23日まで。