再開発などで駅が複雑化している渋谷駅の混雑緩和・乗り換え時間短縮に向け、東口地下広場の設備などが進んでいる。7月2日、報道陣に工事現場が公開された。
2005年12月に都市再生緊急整備地域に指定され、2010年10月に渋谷駅街区土地区画整理事業の施行が認可された渋谷駅周辺地区。駅周辺の交通結節点機能の強化や歩行者空間の確保などを目的に、東急電鉄、JR東日本、東京メトロが共同施工者として、渋谷駅と駅周辺の再編・再開発を行っている。
渋谷駅には4社8路線の鉄道が乗り入れるが、2013年の東横線と副都心線の相互直通運転開始後は、地下にある両線の駅とJR線や銀座線など地上にある駅の乗り換えの不便さを訴える声も聞かれる。
同事業では、地下から地上までの乗換導線の改良するため、地下3階に位置する東急東横線・東京メトロ副都心線ヒカリエ前改札から、地上1階に位置するJR線改札までをつなぐエスカレーターを5基(うち3基が1階まで直通)に増やすほか、エレベーターも新設する。JR山手線は現在内回り・外回りの2面に分かれているホームを1面2線化し、同ホームから現在約350メートル離れている埼京線のホームを移設し並列化する予定もある。
東京メトロ銀座線のホームは現在の場所から約130メートル表参道側に移設するとともに、相対式ホームを1面2線の島式ホームに変更。新改札を渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷2)に隣接する明治通り沿いに設置することで、明治通りを跨ぐことなく東横線や副都心線から銀座線改札に移動できるようにする。
地下と地上をつなぐ「結節点的空間」として、宮益坂中央改札近くには東口地下広場を設置。延べ床面積は約1600平方メートルで、最高天井高は通常の約2倍となる約6メートル。2019年度ごろ完成予定。エスカレーターやエレベーターで多層を上下で結ぶ「アーバンコア」で縦導線も強化する。
東口地下広場を整備するため、渋谷川を現在より明治通り側に移設する工事も進めている。1階床面から3~4メートル下を流れる河川の移設距離は約160メートル、幅は約10メートル、計画流量は1秒で95トン。切り替えは今夏を予定。
渋谷駅周辺はすり鉢状の地形のため、豪雨時などは冠水することも度々あったことから、渋谷駅周辺14ヘクタールに降る雨水の貯留槽も整備。最深部は地上から25メートルに到達し、面積は平面が約20メートル×約45メートル、天井高は約7メートル。最大貯留量は4000トン。1時間に50ミリの雨が降った場合に雨水のストックヤードとして使われ、雨水は雨が上がった後にポンプでくみ出して下水に排水する。
五輪・パラリンピックが開催される2020年までに、これらの機能をおおむね確保したい考え。渋谷駅街区土地区画整理事業は今後、駅前広場やタクシープールなど西口エリアの整備も控えており、事業全体の進ちょく状況は約3割強。2027年度に終了予定。総事業費は577億円。