渋谷・松濤の「観世能楽堂」(渋谷区松濤1、TEL 03-3469-5241)が2015年3月31日、閉場する。
南北朝時代に大和(現・奈良)で活動していた猿楽芸能の一座「結崎座」が基となる観世流。その活動拠点である観世能楽堂は、1900(明治33)年に大曲(現・新宿)に開場。地下鉄8号線(現・東京メトロ有楽町線)工事着手などから移転することになり、1972(昭和47)年に佐賀藩主・鍋島家の邸宅跡である現在の場所に開場した。
敷地面積は838坪。延べ床面積は地下1階~2階の3フロア合わせて約616坪。場内には、正面席354席、脇正面席198席計552席を用意。舞台は木曽ヒノキのムクで作られている。
開場から40年以上がたち老朽化が進み、耐震構造などを備えるには設備投資が必要であることや、住宅地であるため建て替えも難しいことから閉場。2016年、銀座松坂屋跡(中央区)を中心に完成予定の複合ビルに移転することが決まっている。
新しい観世能楽堂は同ビル地下3階に位置。現在の観世能楽堂とほぼ同規模になるが、席間を広くしたりシートを大きくしたりするため、席数は少し減る見込み。舞台は現在の観世能楽堂のものを解体、移築する。
現在の観世能楽堂では、2015年3月27日~30日に「さよなら公演」を行う。演目は、思いを裏切られた女の執念を表現し、シテ(=主人公)が鐘の中に入り早着替えする演出が見どころの「道成寺」、天下泰平・五穀豊穣(ほうじょう)・国土安穏を祈る「祈とう・儀式」の要素が強い「翁(おきな)」など、4回5公演。各公演ともに、狂言や舞ばやし、仕舞(しまい)などがある。各地の一門の主だった能楽師のほか、観世流以外の流派の家元らも出演するという。さよなら公演を含め、現在の観世能楽堂での総公演数は7337公演に上る予定。
観世会理事長で二十六世観世宗家・観世清河寿(きよかず)さんは開場当時を「ふいても浮き出てくるヒノキの木くずの中で舞った」と振り返り、「(移転は)非常に寂しい思いもあるが、中身は普遍的なもの。精進を続け、良い能を作って(お客さまに)ご覧いただくのが責務」と話す。能の世界に「閉場式」は無いというが、最終公演日にはサプライズなども企画しているという。
さよなら公演の入場料は、S席=1万2,000円、A席=9,000円、B席=6,000円。12月10日より先行予約受付開始、2015年1月6日一般発売。