「ダイゴ録」「ガチで」-次なる新語は?最先端ギャル用語導入編
次から次へとお気に入りの言葉を見付け、飽きたら使わない、気に入れば即採用と「肌感覚」で言語を選び取るティーンたちの流行語サイクルは早い。大人が追い付けば「もう古い」。数カ月前に流行った言葉が全国規模で広がるころには、すでに友人グループやクラス単位の「内輪レベル」で新たな流行語が生まれているのが、この世代の特徴だ。
今や大人たちの日常会話にも頻繁に登場するようになった「KY(空気読め)」はもう古いのか? 最近よく使う言葉は?夏休みに入り熱気を増す渋谷センター街と、ティーンの新たな「遊び場」として連日にぎわうSHIBUYA109最上階の注目スポット「SBY(エスビーワイ)」で話を聞いた。
「うれしうぃっしゅ」「たしかに~」など、多く聞かれたのが竹下登元首相の孫であることをカミングアウト後、一気にブレークしたミュージシャン、ダイゴ☆スターダストさんの「ダイ語(ゴ)録」。独特な言い回しや身振り手振りなどを加えながら話すオーバーリアクションが「面白い」と人気で、「メールとかでふざけて『うれしウィッシュ』って書く」(都内在住の高校2年生、マスミちゃん)、「言葉はまねしないけど両手を使ってふりだけまねする」(同、カホちゃん)と、使う場所やテンションによって使い分けているようだ。
「ダイゴ録」にも度々登場し、今回インタビューしたほぼ全員が「よく使う」と答えたのが「ガチで」。「真剣勝負」などを意味する「ガチンコ」の略で「ガチで頑張る」などの意味で使うこともあるというが、多くの間で主流となっているのは「マジで」と同義の使い方。「ガチでやばい」「ガチでうれしい」など「何にでも付ける」(都内在住の高校2年生、しおりちゃん)、「超よりもレベルが上の時に付ける」(同、マユミちゃん)というように、応用範囲は広そうだ。
思ってないけど言っちゃう…「適当」系言語がティーンに蔓延!?
「ガチ」にその座を奪われつつある本家「マジ」にも、新たな潮流が生まれている。「ガチで」と同様、質問したほとんどの女子高生が「使う」と答えたのが、会話に対する適当な返事や面倒くさい時に使う「マジか」。本来主流だった「マジ(本気)で?」に代わり、数年前から台頭してきた、語尾の発音を下げて言う「マジだ」の進化系。
「びっくりした時に使う」(都内在住の高校1年生、チャコちゃん)など、一部では「マジで」本来の使われ方もしているようだが、ティーンの間では「面倒くさい時」仕様の使われ方が圧倒的だ。興味ない話題を振られても「マジか」と言って会話をかわす、そんな光景が当たり前になっていようだ。
「マジか」を筆頭に、「面倒くさいから」「適当に会話したい」などの理由で、会話を円滑かつ穏便に「流す」風潮が目立っている。面と向かって言わない代わりに、表向きの相づちで会話をつなぎ、言われる側も空気を察してそれとなく会話を流す、そんなコミュニケーションが、さまざまな「適当」系言語を派生させる。
「面白いって思ってなくても普通に『ウケるんだけどー』とか言っちゃう」(都内在住、高校1年生のりかちゃん)、「メールしてたらちゃんと答えられないから『ウケる』ってとりあえず言う」(都内の高校1年生、かなちゃん)など、面白くないのに口をついて出る「ウケる」もその一例。
ほかに、「どうしよう~」「だるい」など「とりあえず言っとけ」系の言葉も蔓延。「テスト前とかテンパった時に『やばい、どうしよう~』って意味なく繰り返して自分を落ち着かせる」(前出・りかちゃん)、「ちゃんと授業には出るけど、とりあえず『授業だるいー』って言っとく」(都内の高校2年生)など、思っていなくても「とりあえず」言う言葉が次々と飛び出す。ただ、これらの言葉は決して「ウソ」ではなく、本人たちにとっては立派なコミュニケーションの一環。「自分も回りも分かって言っている」(都内在住の高校一年生、りかちゃん)という。
KYの次はダジャレ!?-「オヤジ化」する10代の言語感覚
「『KY』とかはもうあんまり使わない」(都内の高校1年生、リホちゃん)、「たまにウケ狙いで使う程度」(都内の高校2年生、マスミちゃん)と、昨年大流行したイニシャル系略語はすでにティーンの間では影を潜めているのが現状。たまに使うものでも、「PK(パンツ食い込む)」やメールなどで話が変わる時に使う「HK(話変わる)」、高校生になり服装や髪型などを変えることを指す「KD(高校デビュー)」などで、いずれも「いつも使うわけじゃない」(都内在住の高校1年生、るかちゃん)とティーンの間ではもはやピークを過ぎた模様。
ただ、従来「女子高生」の意味で使われていた「JK」を「冗談(J)は顔(K)だけにして」の意味で使う別バージョンの「JK」や、「かわゆす」を略した「KWYS」など、比較的新しいものも登場している。中でも、「KY(空気読め)」の進化系はユニーク。「あえて空気読まない」の略称「AKY」は、「カラオケの最後の曲で(普通は全員で歌える明るい曲などを入れるところを)あえて自分1人でバラード歌う時に使う」(都内の高校1年生、亜耶ちゃん)。KYの頭に「S」を付けた「SKY」は、ローマ字読みの「エスケーワイ」ではなく「スカイ」と読む例外で、KYよりさらにたちの悪い「スーパー(S)KY」を指すそうだ。
次々と新語が登場するも、まだ大ブレークとまではいかないこれらの新イニシャル系言語に代わり、ダジャレ言葉や突然の「英会話」混ぜなど、ともすれば「オヤジっぽい」と言われそうな意外な言語が今、女子高生たちの間でちょっとしたブームになっている。
「ありえない」を意味する「ありえんてぃ」は、数年前から女子高生たちの間で使われ出した言葉だが、人気番組「SMAP×SMAP」のコントでギャルに扮した木村拓哉さんが頻繁に使う言葉として、人気が再燃。一部で流行中の「○○的なテキーラ」は、ギャル用語として定着した「○○的な~」の語尾に付けて使う言葉。「的な」と「テキーラ」をかけた「ベタ」なダジャレぶり。30代以上の世代はもとより、20代の若者が使っても一歩間違えば引かれそうな言い回し。もちろん、ティーンたちにその自覚はない。
この流れで「またねー」の代わりに使う「またにてぃー」も「ありえんてぃ」と同じ系統。どんな時に使うのか聞いてみると、「ふざけている時」「ノリがいい時」と通常のテンションでは使わないというが、比較的機嫌がいい時には好んで使うという。ダジャレ以外にも「オーイェイ(OH YEH)」や「フー(WHO)?」、わざと舌を巻き気味に言う「ソーリ~(Sorry)」など、ひと昔前は世に言う「オヤジギャグ」だった「英会話混ぜ」も一部の間で支持されている。
「プリントクラブ」が「プリクラ」になり、最近では「プリ」まで略すようになったのがティーンの間では一般的だが、「あえて『プリントクラブ』と言う」(埼玉県在住の高校3年生、ユイちゃん)などの意見も聞かれるように、略語や軽やかな言い回しに飽きた一部の女子高生たちの間で、一種の「原点回帰」現象が起きているとも言える。
「イカ東」に「ヌマ」!?-少数派にも注目、流行語のたまごたち
特有の「新しモノ好き」に加え、携帯電話やインターネットなどの普及で情報化が進み、移り変わりの激しさにも拍車がかかるティーンの流行り言葉。いくつかの傾向はあるものの、学校やクラス、仲のいい友人など、置かれた環境で選び取る言語が変わり、決定的な流行語が生まれにくいのもここ最近の傾向だ。
大きな流れを生み出すには至っていないが、次なる流行語にもなり得る言葉はまだまだたくさんある。「髪を盛る」「胸を盛る」など、髪の毛を巻いてボリュームを持たせたり下着で谷間を作ったりする時などに使う「盛る」は、ギャル系ヘアメーク&ファッション誌「小悪魔ageha」(インフォレスト刊)のブームも後押しし一般的になりつつあるが、今ティーンたちが「イケてる人」などを指す時に使うのが、この「盛る」のアレンジ版「盛れてない?」という言葉。
「盛る」はおろか、「イケてない?」などの言い回しにも慣れていない大人が聞けば、一瞬聞き返したくなるような奇妙な言葉も、ギャルの間には難なく浸透しているようだ。ちなみに、「盛れてない?」や「盛れてる」は、服の着こなしがきまっている人や髪型がかっこいいなど、男性にも使うという。
大人には聞き取りづらい難解な言葉もしばしば飛び出す略語はどうか。加入者同士の通話が無料になるなど通話料を少しでも節約したい女子高生たちの間で今ひそかなブームとなっているPHS「ウィルコム」は「コム」と略すのが普通。「イケメン(イケてるメンズ、面)」で定着したかと思われたイケメンも、「イケ」まで短縮化が進んだ。「あの人イケじゃない?」という使い方や、応用編では「イケ様」と「さま」付けで言うこともあるという。
ちなみに、イケの反対語は「ヌマ」。派手な化粧や髪型などの外見が特徴の「ビジュアル系」の中で「イケてない版」を指すという。由来は「池(イケ)と沼」のヌマ。珍しい略語ものでは、「いかにも東大生っぽい(まじめそう)」を指す「イカ東(イカトウ)」や、映画「ナルニア国物語」シリーズに登場する「オチカ」に掛けて、背の小さい人(主に男性)を「お小さい方」の略称で呼ぶ「オチカ」なども。
このほか、「まいうー」などに代表される、いわゆる業界用語にも、一部の女子高生が敏感に反応。17歳のフリーター、ユイちゃんに流行っている言葉を聞くと「バイヤー(ヤバい)って超使う」と即答。前出・高校1年生の亜耶ちゃんも「あれマジ『もいきー』(きもいー)とかよく言う」と本来の言葉を逆さにして語感を楽しんでいる様子。オヤジギャグと同様、「業界用語では?」との指摘にも、「そういうつもりはない」と自覚はない模様。
次から次へと新人が現れる今、若手お笑い芸人たちが生み出す一発ギャグのいくつかは昨年も全国的ブームを引き起こしたが、意外にも女子高生たちの口から実際に発される言葉は少ないようだ。まとまった人気のある注目ワードは少ないものの、一部で聞かれたのが、昨年「そんなの関係ねえ」でブレークした小島よしおさんの新ギャグ「ぴーや(ぴーやぴーや)」や、ナルシストキャラで人気の芸人・狩野英孝さんの持ちネタ「ラーメン・つけ麺・僕イケメン」「スタッフゥー、スタッフゥー」など。
ニックネーム編では友達の名前の語尾に「ぴ」を付ける風潮も。「あやか」なら「あやかっぴ」、ほかに猫などの動物にも「ねこっぴ」と付けたり、この流れの延長からか彼氏のことを「かれぴ」と呼ぶ女子高生もいるようだ。
10代の若者が生み出す流行語に終わりはない。本人たちにブームを引き起こす自覚はなく、気に入ったものを瞬時に選び取る特有の「言語感覚」は常に素直で純粋だ。同じ「プリクラ」でも「プリ」「プリントクラブ」と気分によって呼び方を変えるように、場や空気によって言葉を操るティーンの言語にルールは無用。夏休み、渋谷に集うティーンの「アンテナ」はますます敏感さを増しそうだ。
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